苦手教科の勉強を増やしたら、前より机に向かわなくなった…。 そんなときは、得意な教科や取りかかりやすい単元から始めてみましょう 。苦手教科は、復習する単元を一つに絞り、何をどこまでやるかを先に決めておきます。 「今日は何から始める?」「苦手なところはどこを復習する?」と親子で話しておくと、勉強に取りかかりやすくなります。
ポココ、前回の定期テストで数学の点数が悪かったから、数学の勉強を増やそうって話したよね。最近、逆に勉強時間減ってるんじゃない?
だって、苦手なところばっかりやらされるんだもん。ただでさえ数学はあんまり好きじゃないし間違いも多いからやる気なくなってきたよ。
苦手を何とかしなきゃ5教科の総合点上がりにくいよね。でも、苦手な教科ばかりやるのが大変っていうポココの気持ちもわかるんだ。どうしたらいいの・・・??
テスト点が伸び悩んでいる保護者の方で、よくある悩みだね。でもこれは誰のせいでもないよ。
今日は中学生の苦手克服と勉強のモチベーションについて要因を考え、そのあと具体的な進め方を2つ見ていきましょう。
苦手教科ばかりだと、なぜ勉強を始めにくい?
学習への興味は、「ちょっとできた」「おもしろい」という小さな経験から少しずつ育つ と考えられています。 私たちの塾でも、受講科目を決めるときには、苦手な教科の点数とあわせて、本人がどの教科で「できた」「もう少しやってみたい」と感じられそうかを見ています。苦手教科で間違いが続き、勉強を始めること自体が負担になっているときは、手応えを感じやすい教科を入口にする ことがあります。
まず、「興味」がどう育つかの話をするね。アメリカとカナダの研究者が、学習者の興味がどう生まれて、どう深まっていくかを整理しているんだ(Hidi & Renninger, 2006)。
興味や関心って、最初から持っているものじゃないの?
最初は「へえ、おもしろい」という小さなきっかけから始まるんだ。
興味は「ちょっとおもしろい」と感じたことがきっかけになって、何度か触れるうちに「もっと知りたい」に育つことがあるのです。 これには、気持ちの面と、知識の面の両方が関わるとされています。
※ただ、この研究は理論の整理で、得意と興味の関係を直接調べたものではありません。
たしかに、英語の単語テストで満点を取ったとき、次の単元も「やりたい」って気持ちになったかも。
それが、小さなきっかけが育つ例だね。逆に、間違いが続く教科だと、「おもしろい」に出会う前に「またダメだった」で終わってしまう 可能性があるよね。
数学は小学生の頃から苦手で間違いも多いから、「解けておもしろい」どころか「もう無理」ってなってるかも。
そうだね。ポココの場合は、英語の復習から始めると、最初の一歩を踏み出しやすそうだね。
苦手なところが気になってたけど、ポココが『これならできそう』と思えるところから始めてもいい んだね。
「今日は何からやる?」と、最初の課題を子どもに選んでもらう
子ども自身に「どの教科からやる?」と選ばせる と、やる気や「できる」という感覚が高まる傾向が報告されています。また選択肢に得意教科を入れておくと、勉強を始めやすくなると考えられます。
じゃあ、具体的にはどうすればいいの?
1つ目は、「今日は何からやる?」と選んでもらう ことだよ。ポココ、今までは数学をやりなさいって言われてた?
うん、ほぼ毎日。選べたことはあんまりないかな。
選ぶことについても研究があるよ。パズルや算数のゲームなどで、自分で選んだグループと、決められたグループを比べた実験を、アメリカの研究者がまとめて分析したんだ(Patall, Cooper, & Robinson, 2008)。
Patall, Cooper, & Robinson, 2008
Patallらがまとめた41研究では、選べることが、自分から取り組みたい気持ちや課題に対する有能感などにプラスに働く傾向が見られました。 たとえば、6種類のパズルから3種類を選んで解いた人と、3種類を他人に決められて解いた人を比べた実験があります。 結果としては、自分で選んだ人のほうが自由時間にも自らパズルを解き続けた、と報告されています。
選ぶだけで、本当にそんなに変わるの?
「全員が必ず変わる」とは言い切れないけど、課題を選べた人は、自分から取り組みたい気持ちや「この課題ならできそう」という感覚が高い 傾向があったんだ。
また、この実験は大人に比べて子どものほうが効果が大きい傾向 があったようです。
家庭では、たとえば「英語と数学、今日はどっちからやる?」 と聞いてみよう。本人が選んで決めたら、その順番で始めていいんだよ。
※ただ、この研究は選ぶこと自体の分析で、得意教科を選んだ場合の話ではないので、得意教科を選択肢に入れるのは、私たちからのご提案です。
なるほど!じゃあ今日は試しに「数学やりなさい!」じゃなくて「どっちからやる?」って聞いてみようかな。
得意教科は短い復習から、苦手教科は基本問題1問から
得意教科から始めて、苦手教科は1日10分などの小さな目標にする、という両立の形がおすすめ です。高校入試は複数の教科で見られるため、苦手を放置しない形にしておくと安心です。
でも、得意なところだけやっていて、本当に大丈夫なのかな。苦手を放っておくのは、やっぱり不安だよ。
その不安は大事だよ。多くの高校入試は、複数の教科の合計で見られるからね。
そのため、塾で多くの中学生を見てきた経験をもとにすると、苦手をゼロにするのではなく、「最低ライン」をまず決めておく ことがおすすめです。
最低ラインって、どのくらい?
たとえば、平日の家庭学習をこんな形にしてみるのはどうかな。
順番 やること 時間の目安 ① 自分で選んだ得意教科から始める ※ノートを使った問題演習中心 30分 ② 苦手教科は、基礎問題・語句暗記に絞って取り組む ※参考書・動画解説を使った知識/解き方インプット中心 10分
うーん、苦手教科が10分だけなら、なんとかやれそうかな。
ノートに書いてたまに見せてくれれば、「勉強した?」って聞かなくても、見てわかるね。
【まとめ】苦手ばかり見ないで、得意教科から始めて、苦手は小さく続ける
家庭学習に取りかかりにくい日は、最初にやる課題を本人に選んでもらいましょう。 迷ったら得意教科の短い復習から。苦手教科は、基本問題1問など、終わりが見える課題に絞ってみましょう。
苦手ばかり注意してたけど、得意なところを認めてあげるのも大事なんだね。「勉強嫌い」にさせちゃったかもってずっと不安だったけど、少し気持ちが軽くなったよ。
今日は英語から始めて、数学は10分だけやってみる!ノートも見せるから、「勉強した?」は聞かなくていいよ。
わかった!ポココが決めたことなら、しっかり応援するね。見せてくれるのを楽しみにしてるよ。
二人とも、その調子だよ。苦手は、なくすことだけが目標じゃないよね。得意を入口するこの勉強法で、焦らず少しずつ進めていこう。
📖参考文献 Hidi, S., & Renninger, K. A. (2006) 『The four-phase model of interest development (興味発達の4段階モデル)』 Educational Psychologist , 41(2), 111–127.(カナダ・アメリカ)
Patall, E. A., Cooper, H., & Robinson, J. C. (2008) 『The effects of choice on intrinsic motivation and related outcomes: A meta-analysis of research findings (選択が内発的動機づけと関連する結果に与える影響:研究結果のメタ分析)』 Psychological Bulletin , 134(2), 270–300.(アメリカ)
記事監修者
上沼 真也
5,000名以上の中学生を指導した経験から、デジタルとアナログを掛け合わせた「自宅学習の最適解」を提唱。
ICT教育の専門家として中学生の学習の悩みに寄り添い、最短ルートで目標達成を支援する知見を発信します。