親子のかかわり

休日に勉強しない子をどう動かす?自分から始めやすくなる声かけ〈後編〉

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▶〈前編〉中学生が休日にだらだらして勉強しない理由と、親の接し方はこちら

休日にだらだらして勉強しない中学生には、「勉強しなさい」と繰り返すよりも、始めるハードルを小さくし、本人がタイミングを選べる声かけが役立ちます。
たとえば「ワーク1ページが終わったらゲーム」「やるなら夕飯前とお風呂後、どっちがいい?」など、行動科学の考え方を家庭で使える形にすると、勉強を始めるきっかけを作りやすくなります。
この記事では、プレマックの原理とナッジの考え方を使った具体的な声かけを紹介します。

ドスター!前回教えてもらった『休日はしっかり休ませて、雑談を増やす』っていうの、さっそく試してみたよ。確かにイライラは減ったし、ポココもリラックスしてたんだけど……結局だらだらしてるだけで、勉強は全然しなかったんだよ!ここからどうやって机に向かわせればいいの?

えー、せっかく親が優しくて最高な休日だと思ってたのに。やっぱり結局『勉強しろ』って言いたいだけじゃん!

だって、テストの点数も心配なんだもの!『勉強しなさい!』って命令すると逆効果なのはわかってるけど、放っておいたら永遠にスマホで動画を見ちゃうでしょ?

ふむふむ、焦らなくても大丈夫だよ。まずは家庭を『安全基地』にできたことは大きな一歩だ!今日は約束通り、関係性が良くなったあとに使える「行動科学をヒントにした声かけ」を教えるね。

休日に勉強しない中学生には「好きなことの前に少しだけ」

ゲームやスマホなど普段よくする行動を「小さな勉強のあと」に置くと、勉強を始めるきっかけを作りやすくなります。

これから紹介するのが、今日一番のポイント!アメリカの心理学者デイヴィッド・プレマックが提唱した『プレマックの原理』だよ。

ドスター博士の豆知識

【プレマックの原理とは?】

アメリカの心理学者 デイヴィッド・プレマック(David Premack)が1965年に提唱した行動心理学の考え方。 
「普段よく行う行動」を、「あまり行わない行動を終えた後にできる行動」として設定することで、気が進まない行動を始めやすくするというものです。

中学生にとって『スマホを見る』『ゲームをする』は、放っておいてもやる大好きな行動ですよね。一方で『勉強する』は、できればやりたくない行動だと思います。

プレマックの原理では、『好きなことをする前に、まず小さな学習を終える』という順番を作るのです。

そうなんだ!具体的にどうやって声をかければいいの?

例えば、ポココがゲーム機に手を伸ばした瞬間に、こんな風に声をかけてみて。

✖「いつまでゲームしてるの!先に宿題やりなさい!」(強制)
「そのゲーム始める前に、数学のワークを1ページだけ終わらせておかない?終わったらゲームに戻っていいよ。」(プレマックの原理)

あっ、それならいいかも!『これから楽しいゲームをするぞ!』ってテンションが上がってる時だから、『まあ、ワーク1ページくらいならいっか。どうせ後でやらなきゃいけないし』って思える。ゲームするためのチケットみたいな感じ!

なるほど!好きなことの前に、小さな学習を終える順番にするんだね。しかも『1ページだけ』ってハードルをすごく低くしてあげれば、子どもも動きやすそう!

「今はやりたくない」と言われたら、本人にタイミングを選んでもらう

「今すぐやりなさい」と指示するより、本人が取り組む時間を選べるようにすると、勉強を始めるハードルを下げやすくなります。

でも、もし『えー、今はワークやりたくない』って断られたらどうすればいいの?結局イライラして怒っちゃいそう……。

そんな時は、行動経済学の『ナッジ理論』を組み合わせてみよう。無理やりやらせるのではなく、子ども自身が選べる余地を残すんだ。

ドスター博士の豆知識

【ナッジ理論とは?】

行動経済学者リチャード・セイラーと法学者キャス・サンスティーンらによって広められた考え方です。
「ナッジ(nudge)」は「そっと後押しする」という意味で、強制や禁止ではなく、本人が選びやすい環境をつくることで、望ましい行動を後押しするアプローチを指します。
なお、セイラーは2017年に行動経済学への貢献によりノーベル経済学賞を受賞しています。

もしポココが『今は嫌だ』と言ったら、そっか。今はやりたくないんだね。じゃあ今日はどうする?もしやるなら、夕飯の前とお風呂の後、どっちがやりやすそう?と、2つの選択肢を与えてみてほしい。

それなら、自分でタイミングを決められるから、『じゃあ夕飯の前にやろうかな』って答えやすいかも!

すごい!強制するんじゃなくて、自分で選ばせるから反発が起きにくいんだね!

ポイントは、親が答えを決めてしまうのではなく、子どもが選べる余地を残すこと
選択肢を整理して、行動しやすくするのがナッジの考え方です。

前編でお話しした『家庭の安全基地化(雑談で信頼関係を作る)』ができているからこそ、この声掛けがスッと心に届くんだよ。まずは『1日10分』や『ワーク1ページ』など、確実にできる小さな学習から始めてみてね。

これなら、親もイライラしにくいし、ポココも勉強に向かいやすそう。自分で『いつやるか』『何をやるか』を少しずつ決められるようになれば、家庭学習も続けやすくなりそうだね!

休日の声かけで大切な3つのポイント

プレマックの原理やナッジは、子どもをうまく動かすためのテクニックではありません。大切なのは、子どもの気持ちを一度受け止めたうえで、「どうする?」「何ならできそう?」と本人に考えてもらうこと。そのうえで、必要に応じて小さな選択肢を用意し、動き出しやすい環境を整えます。

① 最初から長時間やらせない

「1時間勉強しよう」ではなく、まずは「10分」「ワーク1ページ」など、本人が「これならできそう」と思える量から始めましょう。

② 親がすべて決めない

「今すぐ数学をやりなさい」と決めるより、「何からやる?」「いつならできそう?」と本人が決められる部分を残します。

③ 「1ページだけ」の約束を守る

「1ページだけ」と言って始めたのに、終わったあとで「じゃあもう1ページ!」と追加すると、次から「どうせ増やされる」と感じてしまうことがあります。最初に決めた量が終わったら、まずはそこで区切りましょう。


こんなとき、なんて言う?休日の声かけ早見表

子どもの様子反発を招きやすい声かけおすすめの声掛け
ゲームを始めようとしている先に宿題を全部やりなさい!ゲームやりたいよね。
その前に、ワーク1ページだけならできそう?
「今はやりたくない」と言う今やらないとダメ!今はやりたくないんだね。今日はどうする?
やるなら、いつがやりやすそう?
だらだらして動き出せないいつまでだらだらしてるの?今日は疲れてる?
できそうなことはある?
決めた分の勉強ができたせっかくだから、もっとやりなさい決めた分できたね。どうする?
今日はここまでにする?

【まとめ】「勉強しなさい」より、始めやすいきっかけを作ろう

休日にだらだらしている中学生を見ると、つい「勉強しなさい」と言いたくなるものです。
しかし、最初から長時間勉強させようとするより、「ワーク1ページ」「10分だけ」など小さく始め、本人がタイミングを選べる声かけの方が、行動のきっかけを作りやすくなります。

プレマックの原理やナッジは、子どもを思い通りに動かす方法ではありません。
本人が「これならできそう」と思える環境を、親がそっと整えるためのヒントとして活用してみてください。

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FAQ

中学生に「勉強しなさい」と言わないと、本当に勉強しなくなりませんか?

一方的に指示しないことと、完全に放っておくことは同じではありません。「いつやる?」「何から始める?」と、本人が決めやすい声かけに変えることで、自分で動く練習をサポートできます。

ゲームの前に勉強させるのは、ご褒美で釣ることになりませんか?

ゲームを新たな報酬として与えるというより、普段から行っている好きな行動を、小さな学習の後に置く考え方です。最初は「ワーク1ページ」「10分だけ」など、無理なく終えられる量から始めましょう。

「夕飯前とお風呂後、どっちにする?」と言っても「どっちも嫌」と言われたら?

無理に二択から選ばせる必要はありません。「今日はどうする?もしやるなら、いつならできそう?」と本人の考えを聞き、量や時間を一緒に決めてみましょう。

どれくらいの勉強量から始めればいいですか?

最初から長時間を求めるより、「10分」「ワーク1ページ」など、本人が「これならできる」と思える量がおすすめです。まずは始める経験を積むことを優先します。

休日にまったく勉強しない日があっても大丈夫ですか?

休息が必要な日もあります。学校生活や部活の疲れも考えながら、休む日と少し学習する日を本人と相談して決めることが大切です。


■研究・参考文献

・Premack, D. (1965). Reinforcement theory.
・Thaler, R. H., & Sunstein, C. R. (2008). Nudge: Improving Decisions About Health, Wealth, and Happiness.

記事監修者

記事監修者

上沼 真也

5,000名以上の中学生を指導した経験から、デジタルとアナログを掛け合わせた「自宅学習の最適解」を提唱。

ICT教育の専門家として中学生の学習の悩みに寄り添い、最短ルートで目標達成を支援する知見を発信します。