✅今回の内容
○中学生が「まだ時間がある」「なんとかなる」と根拠なく楽観視してしまう心理メカニズム
○勉強もせずにスマホばかり触る子どもに、スマホを一方的に禁止するだけではうまくいかないことがある理由
○「勉強しなさい!」と怒らずに本人のやる気と自走を引き出す3つのアプローチ
受験生の「いつまでたっても勉強時間が増えない…」「直前でもなんとかなるよ!」はなぜ起こる?
「スマホやめなさい!受験生でしょ!」と怒っても、「まだ時間あるし、自分だったら直前になんとかなるよ」って余裕ぶっている気がする……。
親ばかり焦ってイライラしてしまう……。
そんな親御さんも、多くいらっしゃるのではないでしょうか?
両親が焦って心配している一方で、お子さん自身は「なんとかなる」と楽観的に考えてしまっている。
実はこれ、本人のやる気や意識の低さだけが問題ではなく、人間の脳に備わっている「認知の癖(心理バイアス)」が大きく関係していると考えられています。
「なんとかなる」の正体!受験生の意識改革を邪魔する2つの心理バイアス
1.楽観主義バイアス(Optimism Bias)
神経科学者のターリ・シャーロットらの研究では、人には、将来について好ましい情報を取り入れやすい一方、好ましくない情報を十分に反映しにくい傾向があることが示されています。こうした傾向は「楽観主義バイアス(optimism bias)」と呼ばれます。
つまり、人間には「自分にとって悪いことは起きにくく、都合の良いことが起きやすい」と楽観視する傾向があるということです。
「自分なら直前でも何とかなる」「本気を出せば間に合う」と考えてしまう背景にも、こうした認知の傾向が影響している可能性があります。
2.現在バイアス(Present Bias)
行動経済学では、人は遠い将来の利益よりも、目の前ですぐ得られる利益を強く評価しやすいことが知られています。こうした傾向は「現在バイアス(Present Bias)」と呼ばれ、行動経済学者のデヴィッド・レブソン教授(David Laibson, 1997)による双曲割引モデルなど、将来の価値を現在より低く評価しやすい人間の意思決定を説明する研究とも関係しています。
受験勉強に置き換えると、「数か月後の志望校合格」という将来のメリットよりも、「今スマホを見る」「今ゲームをする」といった目の前の楽しみが魅力的に感じられやすいということです。その結果、「勉強は明日から」と先延ばししやすくなることがあります。
スマホ利用については、単純に「禁止する・しない」の二択ではなく、本人と話し合いながらルールを作ることが大切です。
「自分の現状を自覚させて、主導権を本人に渡す」アプローチがおすすめです。
怒らずに「現実感」を持たせる!親の賢い3つのアプローチ
アプローチ①:目標(志望校)を親子でフラットに確認・共有する
まずは「勉強しなさい!」と怒るのをやめて、「将来どんな高校に行きたい?」「高校でどんなことしたい?」と本人の目標や希望を改めて聞いてみよう。親の希望を押し付けるのではなく、子どもの「行きたい場所」「やりたいこと」を共有することが、受験生モードに入る第一歩になりやすいよ。
アプローチ②:入試までの「残り日数・時間」を客観的な数字で見せる
「まだ時間がある」という漠然とした感覚のままでは、受験までの距離を実感しにくいことがあります。そこで、入試までの「残り日数」や「残り時間」を具体的に計算して見せてあげましょう。
たとえば「入試まであと○日」「平日に使える時間は1日○時間」と具体化すると、「この時間をどう使う?」へ話を進めやすくなります。
アプローチ③:「どう勉強するか」の主導権は本人に決めさせる
目標と残り日数を確認したら、「じゃあ、志望校に届くために今日からどう勉強する?」「スマホとはどう付き合う?」と、計画やルールを本人自身に決めさせましょう。
特に中学生になると、自分で決めたい気持ちも強くなってきます。
人は「やらされている」と感じるよりも、自分で選び、決めているという「自律性」を感じられるほうが、自律的な動機づけにつながりやすいことが、自己決定理論の研究でも示されています。
【まとめ】「なんとかなる」を責めずに、本人が動き出せるきっかけをつくろう
受験生なのに「まだ時間がある」「なんとかなる」と考えてしまう背景には、本人のやる気だけでなく、将来を楽観的に考えやすい傾向や、目の前の楽しみを優先しやすい人間の心理が関係していることがあります。
だからこそ、焦るあまり「勉強しなさい!」「スマホ禁止!」と一方的に管理するのではなく、
- 行きたい高校や、そこでやりたいことを一緒に具体化する
- 入試までの残り時間を数字で見える化する
- これからどう勉強するかは、できるだけ本人に決めてもらう
といった関わり方が大切です。
親がすべてを決めるのではなく、「あなたはどうしたい?」「そのためにどうする?」と本人に返していくことで、少しずつ受験を「親に言われてやるもの」から「自分のために取り組むもの」へ変えていきましょう。
受験生モードへの切り替えは、ある日突然起こるとは限りません。焦ってスイッチを押そうとするよりも、本人が自分で現実に気づき、次の一歩を選べる環境を整えることが、親にできる大切なサポートです。
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FAQ
中3なのに受験勉強をしないのは、やる気がないからですか?
必ずしも、やる気の低さだけが原因とは限りません。人には、将来を実際より楽観的に考えやすい「楽観主義バイアス」や、将来の利益より目の前の楽しみを優先しやすい「現在バイアス」といった認知の傾向があります。「まだ時間がある」「直前からでも間に合う」と感じてしまう背景にも、こうした心理が関係している可能性があります。
受験生なのにスマホばかり見ている場合、禁止したほうがよいですか?
スマホの利用制限そのものが必ず悪いわけではありません。ただし、理由を話し合わずに一方的に禁止・没収すると、反発を招くこともあります。まずは本人と受験までの残り時間や目標を確認し、「スマホとどう付き合うか」を一緒に話し合ってルールを決めることがおすすめです。
「まだ時間がある」と思っている中3生には、どう声をかければよいですか?
「もう時間がないよ!」と焦らせるよりも、「入試まであと何日あるかな?」「平日に勉強できる時間はどれくらい?」と、残り時間を具体的に確認する方法があります。数字で見える化したうえで、「その時間をどう使いたい?」と本人に考えてもらうと、感情的な言い合いを避けながら現状を共有しやすくなります。
受験勉強を自分から始めてもらうために親ができることはありますか?
志望校や高校でやりたいことを一緒に具体化し、受験までの残り時間を確認したうえで、「これからどう勉強する?」と本人に選んでもらう方法があります。人は、自分で選び決めているという自律性を感じられるほうが、自律的な動機づけにつながりやすいことが自己決定理論の研究でも示されています。
中3の夏休み明けから受験モードになっていなくても間に合いますか?
必要な学習量や現在の学力、志望校によって異なるため、一概に「間に合う」「間に合わない」とは言えません。大切なのは、焦って大量の勉強を始めさせることよりも、現在の学力と入試までの残り時間を確認し、今からできる学習を具体的に決めて取り組むことです。
■研究・参考文献
- Sharot, T., Korn, C. W., & Dolan, R. J. (2011). How unrealistic optimism is maintained in the face of reality. Nature Neuroscience, 14, 1475–1479.
- Laibson, D. (1997). Golden Eggs and Hyperbolic Discounting. The Quarterly Journal of Economics, 112(2), 443–478.
- Bureau, J. S., Howard, J. L., Chong, J. X. Y., & Guay, F. (2022). Pathways to Student Motivation: A Meta-Analysis of Antecedents of Autonomous and Controlled Motivations. Review of Educational Research, 92(1), 46–72.





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